第1回では、生活機能向上連携加算の制度上の定義・目的・算定要件の骨格を整理しました。今回は「なぜこの加算はこれほど普及していないのか」という問いに、厚生労働省の調査データを根拠に答えます。
1. 算定率3.1%という現実
厚生労働省が介護保険総合データベースのデータを用いて実施した調査によると、2019年10月時点での生活機能向上連携加算の全体算定率は3.1%でした。サービス種別では、グループホームが7.6%で最も高く、通所介護は3.4%でした。
認知症対応型共同生活介護
デイサービス
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000635462.pdf
2. なぜ算定されていないのか
同調査では、算定していない事業所にその理由も聞いています。通所介護での主な回答は以下の通りです。
3. 「連携が難しい」とはどういう意味か
「外部連携が難しい」という回答の背景には、制度上の制約があります。この加算で連携できるのは「訪問リハ・通所リハ事業所、または200床未満の医療機関に所属するPT・OT・ST・医師」に限られています。
同調査によると、算定している通所介護事業所の連携先の内訳は同一法人53%・グループ法人21%と、約4分の3が法人内部での連携です。つまり同一・グループ法人内にリハビリ専門職を持つ大規模法人では算定しやすく、そうでない単独施設では連携先の確保が難しいという構造的な差があります。
(出典:同上)
4. 2021年の改定で何が変わったか
こうした実態を踏まえ、厚生労働省は2021年度改定でICTを活用した助言を評価する「生活機能向上連携加算(Ⅰ)」を通所介護等に新設しました。外部専門職が施設を直接訪問しなくても、動画やテレビ電話を使って利用者の状態を把握し助言した場合に算定できる仕組みです。
なお、PTmateが支援対象としているのは、外部リハビリ専門職が直接訪問する生活機能向上連携加算(Ⅱ)です。
5. 算定を実現している施設に共通する条件
算定事業所への調査では、以下のような効果が報告されています。
- 「専門的な視点を踏まえ質の高い個別機能訓練計画を作成できた」:7〜9割
- 「利用者のADL・IADLの維持・向上につながった」:7〜9割
- 「機能訓練指導員・介護職員のケアの質が向上した」:5割前後
ケアマネジャーへの調査でも「利用者の身体機能の維持・向上につながった」が7割超、「ケアプランの見直しへ良い影響がある」が9割以上という回答が得られています。
(出典:厚生労働省「平成30年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和元年度調査)」)
6. 「手間に対して単位数が割に合わない」をどう考えるか
生活機能向上連携加算(Ⅱ)の単位数は200単位/月です。発生するコストの大半は外部専門職への委託料で、金額は連携先との合議で決まるため一定ではありません。
「割に合わない」と感じる施設と「導入効果が出ている」施設の差は、連携の仕組みが整備されているかどうかに大きく依存しています。第1回でも触れたとおり、この加算の本質は書類作成ではなく「専門評価が実際のケアに活かされているかどうか」です。仕組みが整えば、書類負担は想定より小さく収まることが多いです。次回は費用対効果を具体的に試算します。
この記事のまとめ
- 全体算定率は3.1%(2019年)。2021年以降のデータは未公表
- 算定しない主な理由は「外部連携が難しい」「割に合わない」の2点で約7割
- 算定施設の約4分の3は同一・グループ法人内の連携。単独施設には構造的なハードルがある
- 算定を実現した施設では、ケアの質・スタッフの判断力・ケアプラン精度に好影響が出ている
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000635462.pdf
・厚生労働省「平成30年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和元年度調査)」
・厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000727135.pdf
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